から揚げの誤嚥による死亡事故
だれがだれを訴えた?
原告(訴えた側) Aさん
被告(訴えられた側) デイサービスを運営する株式会社X
裁判の結果はどうなった?
判決(裁判所の最終判断) 損害賠償請求を認めない。
事故当時の原告の状態
Aさん 男性・59歳
要介護4
身体障害者1級
・脳梗塞の後遺症で左半身は完全麻痺
・日常生活では杖歩行
・食事は常食で自立だが、左半身麻痺の影響で咀嚼が難しく、食べこぼしが多い
事故の経緯
・デイサービスで当該施設を初めて利用。
・昼食のから揚げを誤嚥し、死亡した。
事故後の原告の状態
・死亡
判決の内容
事故の状況は……
「通所介護アセスメント表」には、主食・副食ともに常食で禁食はなし、嚥下については普通、と記載されていた。
アセスメント表作成の際、Aさんの食欲が旺盛であることなどが話題になってはいたものの、自宅で誤嚥した経験はなかった。主治医からも家族からも、「誤嚥」という言葉を使用した特段の注文や要望はなかった。
Aさんが施設を利用した初日、Aさんは車椅子に座ってテーブルについた。他に利用者がいなかったため、Aさんの正面に2名、隣に1名の職員が座った。
昼食には、白飯、みそ汁、卵焼き2切れのほか、Aさんが希望した鶏のから揚げ5個が出された。Aさんはから揚げを誤嚥し、死亡した。
裁判所の判断
左半身麻痺のために食べこぼしがあったことから、Aさんの咀嚼が困難で、健常者にくらべて飲み込みにも問題がある可能性を考えることも不可能ではない。
ただし抽象的にはともかく、具体的にAさんに誤嚥の危険性があること予見する(前もって見通す)ことは困難だった。
提供したから揚げは、健常者に出されるものにくらべて小ぶりであり、3人の職員が近くで見守りながら食事を共にしていた。
Aさんがむせてせき込みはじめたとき、職員はすぐに背中をたたいたり、口の中のものを出させたりするなどの対応をした。
さらに、Aさんの顔色が急激に悪くなった直後には119番通報している。救急隊が到着するまでの間はAさんを車椅子に座らせたまま、顎を上に向けて気道を確保し、声かけをしながら背中を叩き続けた。
事故の経過を踏まえた場合、施設職員の対応は、医学的にも事故対応としてもふさわしくないものだったということはできない。