ショートステイ利用者の転倒事故
だれがだれを訴えた?
原告(訴えた側) Aさんの遺族の1人(法定相続分5分の1)
被告(訴えられた側) 介護施設X
裁判の結果はどうなった?
判決(裁判所の最終判断)
介護施設Xは、Aさんに慰謝料2200万円を支払うべき。
法定相続分5分の1である原告には440万円と弁護士費用40万円を支払う。
事故当時の原告の状態
Aさん 女性 96歳
・要介護2
・室内では歩行器、屋外ではシルバーカーを利用。
・背中が丸くなっていたため歩行器等のグリップから体を離して
歩いており、歩行中に転倒する危険があった。
事故の経緯
・Aさんがユニットの共同生活室から個室に移動する際、後ろ向きに
転倒した。
事故後の原告の状態
・胸椎を圧迫骨折し、発熱、呼吸困難等の症状を経て死亡。
判決の内容
事故の状況は……
Aさんの体の状態については、「屋外を歩く際、足がもつれてほとんど進まないことがある」という記録がある。
また、訪問看護計画書の「変形性脊椎症により、腰椎変形や右肩関節可動域制限があり、右手指骨骨折治療後にて力が入りにくく、転倒する可能性が高い」との記載からも、歩行中にいつ転倒してもおかしくない状態であったことがわかる。
これらのことから、介護施設XはAさんが「いつ転倒してもおかしくない状態である」ことを認識しており、事故を予見(前もって推察)することが可能だったと考えられる。
介護施設Xでは、Aさんが歩行する際、離れた位置からの見守りを行っていた。
裁判所の判断
「離れた場所からの見守り」は、転倒した後の介助や手当てといった「事故が起こった後の対応」を前提とせざるを得ない。
Aさんが「いつ転倒してもおかしくない状態」であった以上、介護施設Xは、離れた場所からの見守りにとどまらず、可能な範囲で歩行介助や近接した位置からの見守り等、転倒を防止するための適切な措置を講じる義務があった。